b-21 (私たちはあの世でも成長を止めることはない)

 突然マスターが現われたので、私はびっくりして、マスターの言ったことをくり返すことしかできなかった。
 「我々は肉体を必要としないですって?」
 「そのとおりだ。我々はこの地上にいる間に多くの段階を通過するのだ。赤ん坊の体を脱ぎ捨てて、子供の体になり、子供から成人へ、成人から老人へとなってゆく。老人からもう一歩進んで、肉体を脱ぎ捨て、霊界に行かぬはずがなかろう。我々はそうした道を歩んでいるのだ。我々は成長を止めることはない。我々は成長し続けるのだ。霊界へ行っても成長を続けている。我々はいろいろな発展段階を通過してゆく。我々がこちら側に来る時、肉体は燃えつきるのだ。我々は再生の段階、学びの段階、決断の段階を通り過ぎてゆく。いつどこに、どんな理由で戻るのか決断するのだ。ある者はもう戻らないことを選ぶ、すなわち他の発展段階へと進むことを選ぶのだ。彼らは霊体のままでいる……ある者は他の者より生まれ変わるまでの期間が長い。これはすべて学びと……不断の成長のためなのだ。我々の肉体はこの地上にいる間の乗り物なのである。永久に存在し続けるのは我々の霊魂なのだ」。
 声と話し方は聞き覚えがなかった。新しいマスターが話していた。しかも、きわめて重要なことを話していた。私はこうした霊的な世界のことについて、もっと知りたかった。
 「物質界における学びは霊界での学びよりも速いのですか? みんなが霊界にとどまろうとしないのは何か理由があるのですか?」
 「霊界での学びの方が物質界での学びよりずっと速い。我々は自分が学ばなければならないものを選んでいるのだ。人間関係について、もっと学ぶ必要があれば、戻ってこなければならない。そのことを学び終えた者は、もっと先へ行くのだ。霊的な世界にいる時、もしそうしたければ、物質界にいる人々といつでもコンタクトすることができる。ただ、そうしなければならない時だけだ。どうしても生きている人達に何か知らせなければならない時だけなのだ」
 「どうやって連絡するのですか? どうやってメッセージは送られるのですか?」驚いたことに、今度はキャサリンが答えた。彼女の口調は早口で確かだった。
 「時には、ある人の前に現われることもできます。……そしてこの地上にいた時と同じ姿を見せることもあります。また時にはテレパシーで連絡するだけのこともあります。メッセージは隠されていることもあります。しかし、たいていの場合、送られた人はその意味を理解できます。受け取る人にはよくわかるのです。それは心と心のコンタクトだからです」
 私はキャサリンに話しかけた。「あなたが今知っている知識や情報や知恵は、どれもとても大切なものばかりです……でもあなたが目覚めて、物質界にいる時は、なぜこうしたことを知らないのですか?」
 「多分、私が理解できないからです。私にはまだこうしたことを理解する能力がないからです」
 「では、私があなたに教えてあげることができると思います。あなたをこわがらせないように、わかりやすく」
 「はい」
 「マスターの声をあなたが聞いている時、あなたが今、私に言っているようなことをマスター達も言っているのですよ。あなたにもきっと、すばらしい知恵があるのだと思いますよ」。私は彼女がこのように超意識状態にいる時にもっている知恵のことを、もっと知りたかった。
 「はい」とだけ彼女は答えた。
 「これはあなた自身の中からきているのですか?」
 「でも、彼らが私に教えてくれたのです」と彼女はマスターを持ち上げた。
 「そうだろうね」と私も認めた。「では、こうしたことをあなたにどのように伝えれば、あなたはもっとこわがらずに、受け入れることができるのですか?」
 「あなたはもうそうしていますわ」と彼女はやさしく答えた。彼女の言っているとおりだった。彼女の恐怖心はほとんどなくなっていた。退行催眠が始まってから、彼女は信じられないほど急速に回復していた。

  ブライアン・ワイス『前世療法』、山川紘矢他訳、PHP研究所、1996、pp.169-172





  b-22 (結局人類は自らを破壊することになってしまうだろう) 

「今、何か見えますか?」と私はたずねた。
「何にも」と彼女はささやいた。
「今、休んでいるのですか?」
「ええ、……いろいろな色の宝石が……」
「宝石?」
「ええ、本当は光なんだけれど、宝石のように見えます……」
「他には?」と私はたずねた。
「えーと」と彼女は押し黙ったが、今度は大きな力強い声で語り始めた。
「言葉や考えがまわりを飛びまわっています。……共存と調和についてです。……ものごとのバランスについて……」。マスター達が近くにいるようだった。
「それは面白い。もっと知りたいから話してみてくれますか?」と私はせかせた。
「今は言葉だけが飛びかっています」と彼女は答えた。
「共存と調和という言葉?」と私は念を押してみた。次に彼女が答えた時、彼女の声は詩人のマスターの声になっていた。彼の声を再び聞けて私はぞくぞくした。
「そうだ」と彼は答えた。「すべてのことはバランスしなければならない。自然はバランスしている。動物達は調和して暮らしている。人間だけがまだ平和に生きることを学んでいないのだ。人間は自らを滅ぼそうとし続けている。そこには調和もなければ、自らが行なうことに何の計画ももっていない。自然とはかけ離れてしまっているのだ。自然はバランスしている。自然はエネルギーと生命と再生である。しかしながら、人間は破壊しているだけなのだ。人間は自然を破壊している。人間は他の人間も破壊している。結局人類は自らを破壊することになってしまうだろう」
 これは不吉な予言だった。混乱と動揺に満ちたこの世界で、この予言がすぐに実現しないことを私は祈った。「いつ人類の破滅が訪れるのですか?」と私は聞いた。
「人間が思っているより早く破滅が訪れよう。しかし自然は生き残る。植物は生き残るのだ。だが人間は生き残れない」
「その破滅を防ぐため、我々は何ができますか?」
「いいや、すべてはバランスされねばならない……」
「我々が生きているうちに破滅が来るのですか? なんとか避けることはできませんか?」
「我々が生きているうちには起こらない。破滅が起こる時、我々は別の世界、別の次元にいる。我々はそれを見ているだろう」
「人々に何か教えてあげる方法はありませんか?」と私は何か逃れられる道はないか探していた。人類存続の可能性はないのだろうか。
「それは別のレベルによってなされることなのだ。我々はそこから学ぶだろう」。私は明るい面を見ることにした。「では、私達の魂が異なる場所で成長するのですね」
「そのとおりだ。我々はもうこの地上には……、いないのだから。我々はそれを見るのだ」
「はい」と私は答えた。
「私は人々に教えてあげなくてはと思います。でもどうやって教えたらよいのでしょう。何か方法がありますか?それとも人間は自分で学ばなければならないのでしょうか?」
「すべての人に教えることはできない。破滅を止めるためにはすべての人に手を差し伸べなければならないが、お前にはできまい。止めることはできない。人は学ぶことだろう。人は進歩した時、学ぶだろう。平和というものは存在する。しかし、ここにはない。この次元にはないのだ」
「終局的には平和になるのですか?」
「そうだ。別の次元で」
「でも、それはとても遠い所のようですね」と私は文句を言った。
「人間は今、とても堕落している。……貪欲で、権力を追い求め、野心でいっぱいだ。人は愛と理解と英知を忘れている。まだまだ学ばなければならないのだ」
「そのとおりだと思います。私が何か書いて、人々を助けることができませんか?何か方法がありませんか?」
「お前はその方法を知っている。我々はお前に言う必要もない。すべては無駄なことだ。みんなあるレベルに達した時、わかるのだ。我々はみんな同じなのだ。一人の人が他の人より偉大だということはない。そしてすべて起こることは起こる。学びなのだ。……罰といってもいい」
「わかりました」と私は同意した。このレッスンはとても深遠なものだった。それを消化し、本当に自分のものとするには時間が必要だった。

  ブライアン・ワイス『前世療法』、山川紘矢他訳、PHP研究所、1996、pp.194-198





 b-23 (我々は神であり、神は我々なのである )

 「学ぶべきことが何だったかもうわかりましたか? とても大変な人生だったようですね」
 「わかりません。私はただ浮かんでいます」
 「わかった。休んでいなさい」。何分間かが沈黙のうちに過ぎた。彼女は何かに耳を傾けている様子だった。突然、彼女は話し出した。彼女の声は低くて大きかった。それはキャサリンではなかった。
 「全部で七つの界層がある。七界層だ。それぞれの界層は多くの段階で構成されている。その一つは過去を振り返るための界層である(内省の界層)。この界層では、我々は自分の考えをまとめることを許されている。今終わったばかりの人生について振り返ってみることができるのだ。もっと上のレベルにいる人々は歴史を見ることを許されている。歴史を学ぶことによって、物質界へ戻って教えることができるのだ。しかし、低いレベルにいる我々は、自分の人生を振り返ることができるだけだ。今、終わったばかりの人生を」
 「我々は支払わなければならないカルマを負っている。もし今生でこのカルマを支払わなければ、次の人生に持ち越すことになる。いつかは支払わなければならないからだ。カルマを支払うことによって我々は成長するのだ。ある魂は他の魂より成長が早い。人は肉体を持った時にだけしかカルマを返すことができない。もし何かがそのカルマを返すことを妨げると、お前は『内省の界層』へ戻らなければならない。そこでカルマを負った相手が会いに来るまで待つことになる。二つの魂が同時期に物質界に戻ることができる時に、お前達は戻ることが許されるのだ。しかし、戻る時期は自分達で決めなければならない。また、カルマを返すためにすべきことも決めて生まれるのだ。お前は他の転生のことは覚えていない。そのレベルでの魂は直前の人生のことしか記憶していないのだ。高いレベルの魂―すなわち聖人― のみが、歴史や過去のすべてのできごとを振り返ることができる。人を助け、人としての道について教えるためである」
 「霊界には七段階の界層がある。……人間が神に帰るためには、この七つの界層を通過しなくてはならない。七界層の一つは次の次元への移行の界層である。そこでお前は待つわけだ。その界層で、次の人生にどのような資質をもってゆくかが決められる。我々はみんな……何か支配的な特質をもって生まれる。それは強欲であったり、情欲であったりする。しかし、それが何であれ、自分のカルマは相手に返さなければならないのだ。その後、人はその転生の自分の特質を克服しなければならない。お前達は強欲を克服することを学ばなければならないのだ。もしそれができないと、その性質は他のものと一緒に次の人生に持ち越される。そしてその重荷は、ますます大きくなってゆくのだ。一回一回の人生でカルマを返してゆかないと、後の人生はますます困難なものとなろう。もし一つの人生でカルマを返してしまえば、次の人生はもっと容易なものとなるのだ。どんな人生を送るかは、お前は自分で選択しているのだ。だから、お前は自分の人生に一〇〇パーセント責任がある。自分で選択しているからだ」。キャサリンはこう言い終わると押し黙った。
 これは明らかに高いレベルのマスターから来たものではなかった。彼は自分のことを「低いレベルにいる我々」と言って、高いレベルにいる魂、すなわち聖人と比較している。しかし伝えられた知識はどちらも同じように明確で実際的なものであった。あと他の五つの界層とはどのような世界なのだろうか。「再生の段階」とはこの中の一つなのだろうか? また、「学びの段階」と「決定の段階」はどうなのだろう? しかし、様々な霊的界層から伝えられるメッセージは常に首尾一貫していた。伝達の語調や言いまわし、文法や言葉使いは違っていても内容は同じものだった。私は霊的な英知の全体像を習得しつつあった。この英知は、愛と希望と信頼と慈しみについて語っていた。美徳と悪徳、他人へのカルマと自分自身へのカルマを考察していた。数々の過去生とそのはざまの霊的世界のことも含まれていた。調和とバランス、愛と知恵による神秘的で喜びに満ちた神との合一への魂の成長について語っていた。
 またそれに付随して、実際的な助言もたくさんあった。忍耐と待つということの大切さ、自然のバランスの中にひそむ英知、恐怖、特に死の恐怖を取り去ることの大切さ、信頼することと許すことを学ぶ必要性、他人を批判しないことを学ぶ大切さ、他人の生命を奪わないこと、直感力の訓練とその使い方等々、そして最も重要なことは、我々が永遠の命をもっていることをしっかりと知ることだった。我々は死も生も、空間も時間も超えた存在なのだ。我々は神であり、神は我々なのだ。

  ブライアン・ワイス『前世療法』、山川紘矢他訳、PHP研究所、1996、pp.212-215





 b-24 (退行催眠で学ぶべきことをすべて学び終わった)

 しばらくぶりにもかかわらず、彼女はすぐに深い催眠状態に入った。そして大昔の過去生に、あっという間に戻っていた。
 「今いるところは、とても暑いわ」と彼女は話し始めた。
 「二人の黒人の男の人が石の壁のところに立っているのが見えます。石の壁は冷たくて、じめじめしています。二人は帽子をかぶっています。右足の足首にロープを巻いています。そのロープにはビーズや房が編み込まれています。彼らは石と粘土で貯蔵庫を作り、中に小麦を砕いた穀類を入れています。穀類は、鉄の車輪がついた荷車を使ってそこに運び込まれています。織物のマットが荷車に敷かれています。水が見えます。真青な水、誰か責任者が他の人を指揮しています。穀倉の入口には三段の階段が下りています。外には神様の像が建っています。その像は頭は鳥、体は人間の形です。その神は季節の神です。穀倉の壁はつぎめをタールでふさいであります。これは空気を遮断し、穀類を新鮮に保つためです。顔がムズムズします。……私は髪に青いビーズをつけています。小さな虫やハエが飛びまわっていて、顔や手がとてもかゆいのです。私は顔にベタベタしたものを塗って、虫やハエがこないようにしています。……それは樹液で、ひどいにおいがします。
 私の髪は編んであって、それにビーズが金の糸で編み込まれています。髪の色はまっ黒です。私は王家の一員で、何かのお祭りのためにここにいます。僧侶達に香油を塗る儀式があり、それを見るためにここに来ています。これは収穫の前の神に捧げるお祭りです。いけにえは動物だけで、人間のいけにえはありません。いけにえの動物の血が白い台からたらいの中へ流れ込んで……その血は一匹の蛇の口の中に流れ込んでいます。男達は小さな金の帽子をかぶっています。みんな黒い肌をしています。また海を越えた所から連れてこられた奴隷達もいます」
 彼女は黙りこんだ。私達は待った。五カ月前とまったく同じだった。彼女は耳をすませて何か聞いているようだった。
 「何か言っているけど、とても早くて、むつかしくて……変化とか成長とか、異なる界層だとか。気づきの界層と移行の界層があります。人はある人生を終わり、教訓を学び終わると、次の次元すなわち次の人生に進みます。私達は完全に理解しなければなりません。そうでないと次に行くことが許されません……学び終えていないので、同じ所をくり返さなくてはならないのです。私達はあらゆる面から体験しなければなりません。欲する側を学び、また与える側を学ばなければならないのです。……学ぶべきことはとてもたくさんあって、多くの精霊達が助けています。だから私達はここにいるのです。精霊達は……この界層では一体なのです」
 キャサリンは休んだ。それから、詩人のマスターの声で話し始めた。彼は私に話しかけていた。
 「我々がお前に話しかけるのもこれが最後だ。これからはお前は自分の直感で学ばなければならない」
 二、三分の後、キャサリンは今度は彼女のやさしい声に戻った。「黒い塀が見えます……中には墓石があるわ。あなたのお墓もあります」
 「僕のだって?」と私はびっくりして聞き返した。
 「ええ」
 「墓石に何て書いてあるかを読んでくれますか?」
 「名前は『ノーブル』、一六六八年−一七二四年、花が一つ刻まれています……フランスかロシアね。あなたは赤いユニフォームを着ています……馬から投げ出されました……金の指輪だわ……ライオンの頭がついている……紋章として使われていました」
 それだけだった。詩人のマスターは、もうキャサリンの催眠からは啓示は与えないと私に伝えたのだった。そして、まさにそのとおりだった。私達はもう、これ以上、セッションは行なう必要はないのだ。彼女の病気は全快し、私は退行催眠によって学ぶべきことをすべて学び終わったのだ。将来どんなことを学ぶにせよ、それは自分の直感を通して学ばなければならないのだった。

  ブライアン・ワイス『前世療法』、山川紘矢他訳、PHP研究所、1996、pp.241-244