b-41 (かわいい娘が霊界で元気に生きているとわかって) 

 ある日、ミリアムという名の、ひどく取り乱した女性が電話をかけてきて、わたしに助けを求めました。幼い娘が輸血を受けたあとエイズで亡くなったというのです。「あの子が無事だとわかるまでは、とても生きてはいられません」と彼女は言いました。ちょうどキャンセルが出たところだったので、わたしはそこに彼女の予約を入れることができました。
 やがて訪ねてきたミリアム・ジョンソンは、霊媒というものを詳しくは知らないのだと言いました。今は藁にもすがる思いで、誰であれ、ほんのかぼそい光明でも照らしてくれればこんなありがたいことはない、というのです。わたしは彼女をすわらせ、わたしの仕事について詳しく説明しました。彼女は少し不安そうでしたが、わたしが危険人物でもペテン師でもないとわかると、緊張がほぐれてセッションを受け入れられるようになりました。
 わたしはいつものように祈りを唱えてからリーディングを始めました。数分ほどして、わたしの頭のなかにかすかなささやき声が聞こえてきました。
 「あなたのお嬢さんがいらしでますよ。長い栗色の髪に明るい緑色の瞳。笑顔がなんとも愛らしい。ちょっとはにかみ屋さんのようですね」
 ミリアムは目に涙をためながら言いました。「あの子ですか? 本当にあの子が来てるんですか?」
 「そうよ、ってお嬢さんが言ってます」
 「でも、わたしにはわからない。つまり、あの子が何か確かなことを言ってくれないことには」
 「ベシーという名前を教えてくれました」
 ミリアムはこらえきれなくなって泣きだしました。「ええ、あの子のニックネームです。いつも娘をベシーつて呼んでました。本名はエリザベスなんです」
 「奇妙だな……わたしにはよくわからないものを彼女が持っています。ちょっと待ってください。ああ、お嬢さんはぬいぐるみを持ってましたか?」
 「はい、あの子の部屋に」
 「あなたからぬいぐるみをもらったと言ってます。待って!わたしに見せてくれていますよ。なるほど、赤いポニーみたいだ。どうです、心当たりは?」
 「さあ、赤いポニーのぬいぐるみをあげた覚えはないんですけど。あの子のおもちゃのなかにあったかもしれませんが、わたしは思いだせません」
 そこで、ぬいぐるみについてもう少し詳しく教えてほしいとテレパシーでベシーに頼みました。しばらくしてわたしは口を開きました。
 「ベシーがわたしに病室を見せています。あなたが赤いポニーのぬいぐるみを持ってその病室に立っていますよ」
 ミリアムは不意にひらめいたようです。
 「まあ、そうよ、そうだわ。ジョンと一緒にぬいぐるみを買っていったんだった。あの子は病院にいるあいだ、ずっとそれを放さなかったんです。すみません、すっかり忘れていて」
 「いいですか、あなたのお嬢さんはとても聡明で、明らかにひとつの使命を持ってこの世にやってきたんです。彼女のエネルギーも生に対する熱意も実にすばらしい。まさかこんなに幼くして亡くなるなんて、きっと想像もしてなかったことでしょうね」
 ミリアムは大きくうなずくと、目をぬぐって涙を拭いた。
 「ベシーはキャンプの話をしています。彼女がキャンプに行ったことは覚えていますか?」
 「ええ、去年の夏でした」
 「レインディアというような名前では?」
 「いえ、キャンプ・レイニアでした」
 「よく似た音ですね。お嬢さんはメダルを見せています。リボンのようなものが付いている。これはなんだかわかりますか?」
 「はい」ミリアムがあえぎ声を洩らしました。「あの子はメダルを取ったんです。わたし、ちょうどそれを見たばかりでした。ボート漕ぎでもらったんですよ。ボート漕ぎのチャンピオンになったんです」
 「ええ、今朝あなたがそのメダルを箱から出したとき、ベシーも一緒に寝室にいたそうです」
 ミリアムにはとても信じられないようでした。
 「ジョンによろしく伝えてほしいそうです。それから、あなたの決断に賛成だ、と。申しわけないですが、これがどういう意味なのかわたしには見当がつきません」
 またもやミリアムの目に涙があふれました。彼女はわたしをじっと見つめました。「わたし、ジョンのプロポーズを承諾したところなんです。ただ、ベシーが納得してくれるかどうか自信がなかったんですよ」
 「いいわよ、って彼女は言ってますよ。病院で息を引き取ったときに、ジョンがかがみこんで額にキスしてくれたそうです」
 このほかにも信じがたい証がいくつか示されたあと、わたしは何か質問はないかとミリアムに尋ねました。
 「はい。わたしが向こうへ行ったとき、あの子は天国にいるんでしょうか?」
 その瞬間、あまりにも美しく、愛に満ちた感情が幼いベシーから送られてきました。彼女は母親に伝えてほしいと言ったのです。あたしはただいるだけじゃなくて、ママを迎えにいって天国まで案内してあげるわ、と。
 やがてセッションは終了しました。ミリアムは晴れやかな笑顔を浮かべていました。彼女はわたしに抱きつき、感謝の言葉もないと言いました。かわいい娘が今も無事で元気に生きているとわかって、これでやっと新しい人生を始めることができる、と彼女は実感したのです。絶望に打ちひしがれていたミリアムが歓喜にあふれる女性になったのです。

  ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.131-134






 b-42 (あなたに心からの愛を伝えている男性がここにいます)

 わたしの仕事上の喜びは、死後生存という真実を人びとに知らせるだけでなく、その過程でわたし自身が人びとの奇跡的ともいえる輝くばかりの変化に立ち会える、という点にあります。次にご紹介するのは、会席者が永遠の愛を確認した最も感動的なセッションのひとつです。
 わたしに霊から情報が伝えられてもその意味がすぐには会席者に理解できない場合がたくさんあります。トムという青年のリーディングのときもそうでした。わたしが彼のエネルギーに同調していくと、やがて、彼の右隣りにやはり若い青年が立っていることに気づきました。その青年は死の状況を細かく語りはじめたが、もちろん、わたしは事前に何も知らされてはいませんでした。
 「あなたに心からの愛を伝えている男性がここにいます。あなたの右側に立っていますよ。青い目に茶色い髪、それに、顎ひげを生やしている。彼はかなり若死にでした。本当はもっと長生きするはずだったらしい。ふうむ……この男性に心当たりがありますか?」
 「はい、たぶん」とトムが答えました。
 「麻薬でもやっているような、そんな朦朧とした感じが伝わってきます。苦痛を和らげるための薬物、モルヒネのようなものでしょう」
 「ええ、そのとおりです」
 「呼吸も苦しかったようだ。酸素吸入を受けなければならなかったんですね。とても体が弱っている感じがします。エイズの症状に似た感じです。どういうことかわかりますか?」
 トムは泣きはじめました。「はい、よくわかります。彼はエイズで死にました」
 「あなたを愛している、いつまでもそばにいるから、と言ってますよ。今でも一緒だということをなんとかあなたに伝えようとしてきたけれど、あなたには彼が見えない。それがもどかしくてたまらないそうです。あなたが昇進した話をしていますよ」
 「ええ、まあ、その可能性があると、上司から今日言われたばかりです」
 「お友達は笑ってますね。お前が昇進できるようにぼくが手を貸してやったんだ、って言ってますよ。これでひとつ貸しだからな、って」
 トムが笑い声をあげました。
 「ゲイリーという名前をご存じですか?」
 「彼の名前ですよ!」
 「何か表の庭について話しています。あなたが花を植えたがっている、と。おや、彼自身が芝生に水をまいていますね。あなたの花の選びかたがよくない、といったようなこと言っています。どういう意味か、おわかりですか?」
 「ええ。先週、苗木屋に行って、表の庭に植える花をいくつか買ってきたんですよ。家には持ち帰ったんだが、まだ植えてないんです」
 わたしは思わず尋ねました。「それはどうして?」
 「家に帰って、ほかの花と並べてみたら色が合わなかったんです。あの苗木は返してこなきゃいけないな。ゲイリーは庭に関しては好みがやかましくて、毎日、自分で水をやってました。色の合わない花を植えたりしたら絶対にゲイリーがいやがるだろうって、そう思ったんです。ほかの色と合わない花を植える気にはなれなかった。だって、ゲイリーがいやがるでしょうからね!」
 「そのとおり、って本人が言ってますよ」
 わたしとトムは声をあげて笑いました。
 「あなたはガレージで箱の中身をいろいろ調べていたそうですね。彼がアルバムを見せています。これはおわかりですか?」
 「はい。確かに今週、それをやってました。引っ越しを考えていて、持っていくものと処分するものを選り分けたかったんです」
 「あなたが家の売却についてすでに誰かと話をしているとゲイリーが言ってます。あなたは現在の住居の裏手の家をずっと見ていた、と」
 「さあ、どういうことかな」
 「そのうちわかる、とゲイリーは言っています。彼は、二個のハートが組み合わさったようなものをわたしに示しています。思い当たる品物が寝室にありませんか?」
 トムにはこのハートの意味がわかりませんでした。頭のなかで家じゅうを捜してみるのですが、わたしの描写にあてはまるものが思い浮かばないのです。わたしはあとでわかるかもしれないからとトムに言いました。
 「おまえを心から愛している、とゲイリーがあなたに伝えてほしいそうです。これからもずっとこの愛は変わらない、と。いつもあなたのそばにいるから、と言ってますよ」
 トムもゲイリーに愛してると伝え、今でもそばにいてくれるとわかって幸せだと言いました。
 「そばにいることをあなたに知らせるために、そのうちサインを送ってくれるそうですよ」
 「それはすごい。待ちきれないな」
 こうしてセッションは終了しました。このセッションのおかげですっかり心が安らいだとトムは言ってくれました。語られたさまざまな事柄を通して彼はゲイリーの存在を確かに感じたのです。彼はわたしに礼を言って帰りました。

 それから四カ月後、トムがふたたび訪れ、驚くべき出来事を話してくれました。わたしのリーディングを終えて帰宅したトムは録音テープをしまい、それきりセッションについて何も考えなかったそうです。三週間後、ゲイリーが言っていたとおり、彼の昇進が実現しました。トムはさらに説明してくれました。「同僚がカードを二枚くれたんです二枚は昇進祝いのカードでした。で、彼女が『とっても奇妙なことがあったのよ』って言うんですよ。カード・ショップを出ようとしたとき、別のカードの前で足が止まって、どうしてもこれを買わなきゃって気分になったそうです。彼女にはその理由がさっぱりわからなかったけど、とにかく、そのカードをぼくに渡さなければいけないと思った。ぼくがそのカードを開くと、そこにふたつのハートが組み合わさった絵柄があったんです。メッセージが印刷されてました。『愛してる』(アイ,ラヴ,ユー)って」
 トムはそのカードに見覚えがあったので、家に帰ると、ゲイリーから送られた手紙やカードの詰まった箱を片っ端から調べたそうです。そして、例のカードの意味がわかりました。どの手紙にもまったく同じサインがしてあったのです。∴、してる……ゲイリー≠ニ。

  ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.135-139






 b-43 (亡くなった息子と霊界でも一緒にいるガールフレンド) 

 次のリーディングでは依頼人の物の考えかたが一変しました。繰り返しになりますが、誰が現われ、何が伝えられてもわたしはいっさい関知していません。この場合、依頼人が予想もしていなかった人物が現われて、わたしには驚異としか思えない情報を伝えたのです。その夫婦ヴィヴィアンとポール・ストラウスがわたしの前にすわっていました。ふたりが懐疑的だということは一見してわかりましたので、わたしはすぐにリーディングに取りかかりました。

 「さて、あなたがたが誰との交信を望んでいるか、もちろんわたしは知りませんが、ひとつお訊きします。娘さんを亡くしていませんか?」
 ふたりは不思議そうに顔を見合わせてからわたしのほうに向き直りました。ヴィヴィアンが答えました。
 「いいえ。でも、どういうことでしょうか?」
 「若い娘さんが来ているんです。二十歳ぐらいで、あなたがたのそばに立っています。残念ながら、名前がよくわかりませんね。待ってみましょう。そのうち、教えてくれるかもしれません」
 数分が流れました。
 「ヴィヴィアン、あなたのお母さんに関係のある老婦人がここに来ています。シカゴの話をしてるんですが?」
 「はい、それは祖母ですわ。わたしの母の母にあたる人です。シカゴに住んでました。祖母はなんて言ってるんです?」
 「お祖母さんはあなたのお母さんの心配をしていますね。お母さんは目に病気があるか、あるいは、眼科の予約を取りませんでしたか?」
 ポールが落ちつかない様子で体を動かしました。この情報が気になったらしく、彼が代わって口を開きました。
 「そのとおりですよ」
 「あなたはお母さんとうまくいっていないようですね――つまり、お母さんと口をきいていない。こう言いなおしましょう。お母さんはちょっと癖のある人で、ついついあなたたちは喧嘩になってしまう。この意味がおわかりですか?」
 ふたりにはわたしの言葉が信じられなかったようです。わたしはこの家庭の状況を的確に言い表わしたのでした。
 「ええ、わたしは母とそりが合わないんです。なんとかうまくやっていきたいとは思うんですけど」とヴィヴィアンが言いました。「気楽におしゃべりできるような人じゃなくて」
 「あなたのお祖母さん、つまり、お母さんのお母さんですが、ぜひお母さんに優しくしてやってほしいと言ってますよ。もつと理解してやってほしい、と」
 ふたりはうなずいたので、わたしは先を続けました。
 「このご婦人が心からの愛を伝えています。ポールとは誰のことですか?」
 「わたしの名前ですが」とポールが言いました。
 「いえ、同じ名前で、すでに霊界にいる人物です」
 ヴィヴィアンとポールが互いに顔を見合わせました。ふたりの目にみるみる涙があふれてきました。
 「ああ、あなたがたの息子さんだそうですよ。間違いありませんか?」
 「はい、確かに」
 「ポール、息子さんが言っていることをそのまま伝えますよ。あなたはもつと自分の健康に気を配らなければいけない。息子さんがとても心配しています。あなたは彼の死をいまだに引きずっている。ずっと悲しみに浸ったまま、そこから出ようとしていない。それはあなたの健康を蝕んでいきます。外に出て、何かほかのことをしなければ。植物はお好きですか?」
 「はい」
 「表の庭に花を植えてほしいと息子さんが言ってますよ」
 「ついこのあいだ、そうしようかと思ったところです」
 「息子さんがあなたの頭にその考えを吹き込んだんです」
 ふたりは呆然とした表情でわたしを見つめました。情報の正確さに感動し、わたしの言葉のひとことひとことに聞き入っているのです。
 「これは大変奇妙なことに聞こえるかもしれませんが、息子さんがぜひ伝えてほしいと言っています。彼には向こうでガールフレンドがいるそうですよ」
 ヴィヴィアンが顔に両手を当てて泣きだしました。
 彼女がつぶやくようにこう言ったのです。「ええ、そうなんです。彼女は元気ですか?」
 わたしにはどういうことか理解できなかったので、このメッセージの意味を明らかにしてほしいとふたりに頼みました。
 「つまり、現世でガールフレンドだった女性も亡くなってるんですか?」
 「ええ、息子が死んで数カ月後に。わたしたちにとっては娘も同然なんです」とヴィヴィアンが説明してくれました。
 「なんてことだ。とても信じられない」とわたしは答えました。「今はふたり一緒にいるんだと彼女が言ってます。ああ、そうだったのか、セッションの最初に現われてくれた娘さんですよ」
 夫婦はうなずいて同意しました。リーディングはさらにしばらく続きました。わたしは彼らの息子の特徴や死の状況を伝えました。
 「なるほど、息子さんはちょっと奔放なタイプなんですね。なかなか身を落ちつけられなかった。今はこの娘さんと一緒だが、でも、彼は相当のプレイボーイだったようだ」
 「はい、そのとおりです。女友達が大勢いました。少なくとも、本人がそう言ってました」
 「彼は音楽が好きだったらしい。ガレージにあるギターについてはご存じですか?」
 ポールが答えました。「はい、ちょうど見てきたばかりです。ポールはバンドで演奏したがってました。いつも練習してたんですよ」
 「家に帰ったら見てほしいとポールが言ってます。二番めの弦が切れてるそうですよ」
 ポールにはわかりませんでしたが、あとで確かめてみると言いました。
 「車のことも何か言ってますね。お宅にピックアップ・トラックはありますか?」
 「はい」
 「彼は新しいタイヤについて言ってます。新しいタイヤを買うとか、新しいタイヤが必要だというようなことは?」
 わたしは目の前の男性が心臓発作で倒れるのではないかと思いました。顔が蒼白になったのです。
 「先週の金曜日にタイヤを替えたばかりです」
 「ヘッドライトも点検したほうがいいと言ってます。交換しないといけないらしい」
 「驚いたな、わたしも昨日の夜、それに気がついたんですよ」
 夫婦はただ唖然とするばかりでした。
 「息子さんはかなり急死だったようですね。頭がとても妙な感じです。ドラッグで朦朧としたような感じだが、でも、死因は麻薬の中毒ではない。むしろ、体の内側に関係している。彼は長く苦しまなくてすんだとしきりに言ってます。それがうれしかった、と。何か、血液に異常があったんでしょうか?」
 「そうなんです!」
 「エイズだったんですか?」
 ふたりはまたもや泣きはじめました。
 「はい」
 「不思議だ。エイズにかかった人はたいてい長期間の闘病のすえに亡くなってるものです。でも、息子さんにはそんな様子がない。つまり、病気になってすぐ亡くなったような感じがします」
 「はい。エイズとわかって、一週間後に病院で亡くなりました。あっというまの死でした」と父親が答えました。
 「この若い娘さんもやはりエイズで?」
 「はい」今度は母親が答えました。
 「彼女があなたがたによろしく伝えてほしいと言ってます。それから、キャリーにも。誰のことかわかりますか? その人に愛と感謝を伝えたいそうです」
 「キャリーは彼女のお母さんです」
 「あなたがたを悲しませて申しわけないと息子さんが言っています。今は元気でやっている。いずれ音楽の演奏家になるそうです」

 ヴィヴィアンとポールは互いに手を取り合いました。ふたりの願い――新たな世界を見ること――それがかなえられたのです。息子を取り戻せないことはふたりにもわかっています。しかし、わたしを通して、息子があちら側の世界で生きているという確かな証拠を得たのです。彼らは癒やしのプロセスを順調に進みはじめました。その後、ヴィヴィアンと母親の関係はかなり改善されました。ポールは美しい花壇を作り、また、じっくり瞑想しながら、新しい観点から人生を考えはじめています。

  ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.140-146






 b-44 (霊界のボーイフレンドからの愛のことば) 

 わたしはカリフォルニア州サンバーナーディーノにある女性の自宅でグループの交霊会に参加していました。三人の出席者のリーディングを終えたあと、ソファにひとりですわっていた若い女性に声をかけました。彼女の名前はローリーでした。そして、三十分ほどかけて彼女の祖母からのメッセージを伝えました。家族の持ち物の描写や、祖母の品物が家のどこにあるか、といった内容でした。
 そろそろリーディングを終えようとしたとき、若い男の霊が現われ、ローリーのすぐ隣りにすわったのです。彼は彼女の手を握っているようでした。そして、わたしに情報を伝えはじめました。

 「あなたのすぐ横に男の人が腰かけています。彼と会うために今夜あなたはここに来たのだと言ってますよ。心当たりがありますか〜」
 ローリーは今にも失神しそうに見えました。顔が真っ青になり、必死に涙をこらえています。
 彼女の唇がやっと開きました。「はい、彼はここに来ているんですか?」
 「この男の人はあなたを愛していると言ってます。それから、すまなかった、と。自分の行動を悔やんでいます」
 ローリーは涙をぬぐい、うれしそうな笑みを見せました。
 「名前のイニシャルはMだそうです。最初がM、そして、最後がY」
 「ええ、そうです。彼の名前はマーティーです」
 「あなたのボーイフレンドだったんですか?」
 「はい」
 「何か問題があったようですね。あなたに対して正直ではなかったと彼が言ってます」
 「わかってます。もういいんです。本当にかまわないからと彼に伝えてください」
 そこで、わたしは、自分自身で気持ちを伝える方法があるし、いちいちわたしを通さなくても交信はできるのだとローリーに説明しました。
 「どうやらマーティーはタフガイのようですね。ユーモアのセンスも優れている。でも、少しひねくれたところがあるようだ。この意味がわかりますか? とっぴなことを言うもんだから、人から誤解されやすいんですね」
 ローリーがそのとおりだと言いたげににっこりと笑いました。彼はしばしば自分のおしゃべりで人を唖然とさせていたというのです。
 「あなたと一緒に暮らすつもりだったのに、それができなかったと彼が話しています。何か障害があったようですね。あまりに大勢の人間がじゃまをしようとした、と彼は言ってます。どうです、わかりますか?」
 「ええ、わたしの母がマーティーを嫌っていて、わたしたちの同棲に反対でした。わたしたちが引越しの話をしていると、いつもやかましく騒いだものです」
 「マーティーは理解してくれてますよ。彼にはいかがわしい過去があったが、あなたに助けてもらって立ちなおったそうです。不良仲間とのつきあいがあったようですね」
 ローリーがうなずきました。
 「彼は麻薬に深く依存していたらしい。それが原因で感染したんですね――注射針を共用したためだ。そのことについてはご存じですか?」
 「知りません。彼は何も話してくれませんでした。でも、たぶん、そうだと思います。わたしと出会う前の彼は本当にひどかったんです」
 「あなたに会えたことが自分の人生で最高の出来事だったと彼は言ってますよ。ちょっと皮肉ですね。彼は婚約の話をしている。あなたがたは結婚する予定だったんですか?」
 ローリーの目にまた涙があふれてきました。
 「その話はしてました。彼が結婚したいと言ったんです。日取りの相談もしていました」
 「婚約指輪について彼が口にしています。あなたのために自分で選んだ、と」
 ローリーがわっと泣きくずれました。数分後、彼女は首のチェーンに通したダイヤの婚約指輪をわたしたちに見せてくれました。
 彼女は涙で顔を濡らしながら説明しました。「彼のお母さんがこの指輪を見つけたんです。
 わたしの名前が書かれた手紙と一緒に。これをわたしに渡すつもりでいたその日に彼は亡くなりました」
 部屋にいた全員がいっせいに息を呑みました。わたしは数分おいてから、さらに情報を伝えました。
 「いろいろ世話をしてくれてありがとう、とマーティーが言ってますよ。食事や入浴の世話をなさったんですか?」
 「ええ、看護しました。ほかの人は彼に関わるのをいやがってましたから。わたしは気にしませんでした。あの人を愛してましたから」
 「あなたは本当に優しい方だ。あなたは霊に試されていたんですよ。その試験に合格したんです」

 リーディングが終わるまで、マーティーは、ローリーのおかげで立ちなおれたこと、病気のあいだ面倒を見てもらったことに感謝を示しつづけました。彼は今でも彼女を愛していると懸命に訴えていたのです。ローリーは亡くなった恋人の霊との対話を信じてはいましたが、その態度はまだ控えめでした。やがて、わたしのエネルギーが衰えてきて、今夜の交霊会はそろそろ終わりにしなさいとわたしのガイドたちから指示されました。
 わたしは会席者たちに礼を言うと、ローリーに向かって伝えました。「マーティーが、さよなら、ベイビー、と言ってますよ」
 いきなりローリーが立ちあがって金切り声をあげました。わたしがだいじょうぶかと尋ねると、彼女は大声で叫んだのです。「昨日の夜、わたしはマーティーのことを考えながら、彼にこう言ったんです。『もしこの霊媒という人が本物なら、そのときは絶対に来てちょうだい。そして、わたしのニックネームを呼んで』って。わたしのニックネームはベイビーなんです!」
 これを聞いてわたしたちは一様に声を呑み、霊と愛の力に驚喫したのでした。

  ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.147-151






 b-45 (教会で開かれた公開デモンストレーション)

 わたしはハリウッド統一メソジスト教会で月例のデモンストレーションを行なおうとしていました。いつもはわが家の居間でデモンストレーションをするのですが、その夜集まった大勢の参加者を収容するにはあまりにも狭かったのです。居間に入れるのは三十人、教会には二百人が入れました。
 その晩、空はやけに不気味でした。今にも土砂降りの雨が降ってきて街じゅうが水浸しになるだろうと思ったものです。わたしは祭壇に立って群衆のほうに顔を向けました。一瞬、とても奇妙な気分になりました。わたしは群衆を見つめ、それから周囲に目をやりました。教会で交霊会を開くことじたい、われながら信じられない思いでした。わたしは心ひそかに苦笑しがらこう思ったものです。どうだい、昔の司祭さんに今のわたしを見てもらいたいもんだ! わたしは瞑想を始めました。祈りの言葉を唱えるころ、屋根をたたく雨音が聞こえてきました。ただの夕立なんてものではありません。まさに豪雨です!すさまじい雷鳴がとどろき、続いて閃光が走りました。稲光が窓のステンドグラスを明るく照らしだします。なかなかの見ものでした――スピルバーグでもこうはいかないでしょう!
 わたしは会衆席に集まった人びとに向かって言いました。「さてと、今まで怯えていらっしゃらなかったとしても、これですっかり怖くなったでしょう!」
 グループの交霊会やデモンストレーションでは最初に誰が現われてくるか、わたしにはわかりません。このときも霊の想念に耳を澄ますことから始めました。
 「ここに女性が来ています。スーザンという名前を繰り返しています」
 すぐさま左側の二列めの会衆席から女性の悲鳴があがりました。わたしはその女性に目を向けました。「心当たりがおありなんですか?」
 「さあ、はっきりとは。でも、その名前の人を知ってるんです」
 「彼女がこう言っています、あなたはわたしの母を知っている、と」
 「昨日、彼女のお母さんと話をしたばかりです。おしゃべりしました」
 女性はまるで自制心を失ったようにまたもやかんだかい叫び声をあげました。
 群衆がいっせいに彼女のほうを振り向きました。彼女がひどく苦しんでいるのは明らかでした。わたしはしばらく待ちました。
 「この女の人はあなたとの交信を望んでいます。不思議ですね。彼女はあなたの家族ではなさそうだ。でも、あなたにとってとても身近な人で、あなたを愛していると言っています」
 女性がうなずきました。わたしは先を続けました。
 「彼女はキャシーという名前を伝えてきています。その意味がわかりますか?」
 女性は目の涙を拭くと、うつむいたまま小声でつぶやきました。「それは彼女の名前です」
 「あなたが新しい仕事に就いたばかりだと彼女が言ってます。彼女がその手伝いをしたそうですよ。それから、二匹の仔猫を示していますね。一匹は灰色の縞柄、もう一匹は白地に黒い斑点がる。あなたの子供という言い方を彼女はしています」
 「はい、そうです。私の猫です。彼女は私の家にいる猫たちを見てるんでしょうか?」
 「ええ、そのとおりだと言ってます。猫たちはキッチンのベルにじゃれついて遊んでいるそうです。ドアノブにぶらさげであるようですね」
 女性は黙ってうなずきました。
 「彼女が家を見せています。この家はどうもさっきとは違うようだ。ふうむ……木造家ですね。薄い色の木材を使っているようだ。どうやら山小屋らしい。外のポーチに沿ってぐるりと木の手すりが取り巻いています。この家に心当たりは?」
 「はい、わたしたちの家です」
 「改築か、あるいは、建て増しの計画があったと彼女が言ってます。変だな、建築業者のことを役立たずだと繰り返してますね」
 女性が声をあげました。「そうなんです、ポーチのそばの外壁を改装したかったんですけど、いい業者が見つからなくて。おかげでわたしたちにとっては大迷惑でした」
 「彼女が一枚の写真を見せています。ハート形の額に入ってます。なんだかわかりますか?」
 「はい、わたしが持ってるキャシーの写真です。その一枚きりしかないんです。ごめんなさいって、彼女に伝えてもらえませんか?」
 「あなたの気持ちは彼女にちゃんとわかっています。でも、あなたのせいではないそうですよ。どういうことかわかりますか?」
 「いいえ、わたしのせいなんです。わたしのせいでキャシーは死んだんです」
 わたしは耳を澄ましました。そのとき不意に、口のなかに銃を感じたのです。
 「口のなかに銃を感じます。銃身がとても冷たい。すみません、でも、彼女は口に銃をくわえて自殺したような感じがします。そうなんですか?」
 女性はあえぎ声を洩らし、「はい」と答えました。
 「彼女が死ぬ前に大声で叫んだり怒鳴ったりしていたような気がします。何か大きな喧嘩があったんでしょうか?」
 「はい」
 「彼女はひどく取り乱して、寝室に二時間ほど閉じこもっていたと言っています」
 「はい。わたしたち、喧嘩したんです。そのとおりです。本当に悪かったって、お願いですから彼女にそう伝えてください。心から愛しているって」
 「ええ、彼女にはわかってますよ。自殺したのは自分の決断だったとあなたのお友達は言ってます。あのときは、あなたに罪の意識を持たせたかったけど、今はそれが間違いだったとわかっている。あなたを苦しめて申しわけなかったと彼女は許しを求めていますよ。あなたとの関係を終わりにする勇気がなかった、ほかの人の存在を考えただけでどうにも我慢できないくらいつらかった、と。この意味がおわかりですか?」
 「はい。よくわかります。でも、わたしは自分を一生許せないでしょう」
 「いいえ、許すべきですよ。あなたが引き金を引いたわけではない。あなたが説得しようとしたのに、彼女は耳を貸そうとはしなかった。神さまのようにふるまうことなんてできませんからね。いいですか、あなたのお友達は、自分が特別な存在だと気づくだけの豊かな愛を自分自身のなかに見つけられなかった。彼女はあなたの責任ではないと言いたくてここに戻ってきたんです」
 女性はわたしの言葉をじっと聞いているようでした。セッションはさらに数分続き、そのあと、別の聴衆に届けられたメッセージに移りました。

 休憩中に先ほどの女性がやってきてわたしに抱きつきました。「わたし、こういうことって全然信じてなかったんですけど、でも、あれは間違いなくキャシーでした」と彼女は言ったのです。キャシーのメッセージは彼女にとって大きな救いとなりました。「キャシーだという証拠があまりにも多くて疑う余地なんて全然ないんですもの」彼女はこれからは自分を許そうと努力してみると言いました。そして、キャシーのために祈り、助けを求めていくつもりだ、と。
 あとになってわかったことですが、この女性は別の女性と関係を持っていました。そこで、そろそろ関係を清算したいとキャシーに持ちかけたところ、ふたりは口論となったのです。キャシーは寝室に行って銃を取りだし、銃弾をこめました。そして、浴室に入って施錠し、銃をくわえて引き金を引いたのです。
 最後にひとつ付け加えておきましょう。キャシーがこの友人に語った話によると、自分の死の記憶に今でも悩まされているけれど、霊界の人びとから助けてもらっている、ということでした。

   ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.161-166






 b-46 (霊界から息子が自殺した時の状況を伝えられる)

 玄関を開けると、やわらかい肌に美しい微笑を刻んだ中肉中背の女性がそこに立っていました。五十代の後半といったところでしょうか、穏やかな自信に満ちた雰囲気が全身からあふれていました。言葉づかいが上品で、彼女自身についても生活一般についても堅実な印象を受けました。
 交霊会は初めてで、霊媒というものをそれほど信じているわけではないが、過去の問題解消には役立つかもしれないとセラピストから勧められた、と彼女はまず率直に語りました。この現在を生きていくために「なんでもやってみる」つもりだと言ったのです。「それに、可能な方法はすべて試してみたいのです」と彼女は言いました。こういった話を聞くうちにわたしはたちまちこの女性に親近感を覚えました。非常にチャーミングな性格で、しかも、さわやかなすばらしいユーモア感覚の持ち主でした。『アンディ・グリフィス・ショー』に登場する“ピーおばさん”を連想しました。もちろん、彼女自身や彼女が交信を望んでいる相手についてわたしには知識も情報もいっさいありませんでした。「こんなところでくつろいでいただけますか?」と訊くと、「申し分ありませんわ」と彼女は答えました。そこでわたしはリーディングを始めました。

 「あなたの後ろに男の人が立っています。誕生日おめでとう、と言ってますよ」
 「あら、それはどうもありがとう。わたくしの誕生日は一昨日でした」
 「この男性はあなたの大変身近な人ですね。アフリカに行く、もしくは、アフリカにいる、といった話をしています。どういうことかおわかりですか?」
 「ええ、わかりますとも。わたくしども夫婦は長らく向こうで暮らしておりますの。そろそろこちらへ戻りたいと思っています。なんだか、こういうのって、おもしろいですわね?」
 「息子さんとお嬢さんがおありですか?」
 「いいえ、男の子がふたりです」
 「あなたの後ろにいる男性は息子について何か言っていますね。彼があなたの息子なのか、それとも、あなたの息子について話しているのか、どうもはっきりしません」
 「わたくしにもわかりませんわ」
 「ちょっと待ってください。ああ、なるほど。あなたの下の息子さんが亡くなってますね。そうですか?」
 「はい、そうです」
 「その息子さんがここに来ています。あなたの後ろにいる人ですよ。彼はひどく戸惑ってますね。わたしたちがこういうことをやってるなんて信じられないそうだ。いや、あなたがやってるのが信じられないということですね」
 「それはよくわかりますわ」
 「古い部族の工芸品の収集についてはおわかりですか?」
 「ええ、わたくしの夫がアンティークを扱ってますので。家にはそういうものがあふれてます。でも、すごいわ、嘘みたい」
 「アンドルー、あるいは、アンディという名前に心当たりは?」
 「息子の名前です。アンディと呼んでました。父親の名前を採って名づけたんですよ」
 「彼が素敵なお屋敷を見せてくれています。壁には美しい油絵がたくさん掛かっている。世界じゅうから集められたもののようですね。まるで美術館みたいだ」
 「そのとおりです。ほんと、あなたって、すばらしいわ! わたくし、美術品を集めてますの。ほとんどは油彩画で、かなり大きなコレクションですのよ。それにしても、驚きだわ」
 わたしがどうやってこうした情報を知り得たのか、それをこの女性が考えているのは明らかでした。
 「また何か異国ふうの品物を見せてくれています。毛布か膝掛けのようなものですね。やはり家のなかのあちこちにある。ああ、壁に掛けてあるところを彼が見せていますよ」
 女性がうなずきました。
 「裏に住むというのはどういうことでしょう? アンディは裏に住んでると言ってるんですが」
 「裏にゲストハウスがあるんです。アンディはそこをアトリエとして使ってました。ほとんどそっちで暮らしてたんですわ」
 わたしは納得しました。「だから、彼はこんなにきれいな色彩を見せてくれてるんですね。そう、確かにこれは画家のパレットだ」
 この交霊会はそれから三十分は続き、死後生存の驚くべき証拠が示されました。アンディは自分がどこにいるのか、そして、何を体験しているのか、それを事細かに語ったのです。
 「彼がこう言っています。最初にあちらへ行ったとき、病院のようなところにいたそうです。みんなに助けてもらったおかげで精神状態が回復した。今は芸術家村に住んでいて、そこでは人びとがそれぞれ独自の芸術表現を行なっている。彼はお互いに理解し合える人びとと出会っているそうです。最近はいろんなことをたくさん学んでいるそうですよ」
 さらにアンディは母親との関係、そして、自分の死について語りました。
 「息子さんは非常に神経過敏で傷つきやすい人だったようですね。彼はとても不幸だった感じがします。いや、不幸というのではなくて、むしろ、憂鬱だった。感情の抑えが効かないような感じです。彼は何か薬物を服用していましたか?」
 「はい。躁鬱病の薬を医者から処方してもらっていました。それに、非合法のドラッグも使ってました」
 「なるほど。ええ、確かに彼は麻薬中毒でしたね。しかし、彼には化学的アンバランスがあった、そのせいで死に至ったのだと、アンディ本人が確信していますよ。お母さんを憎んでいると彼は何度もあなたに言ったそうですね」
 「ええ、そうでした」
 「もちろん、彼が本気じゃないことくらい、あなたにはわかっていた。息子さんは病気だったんです」
 「ええ、もちろん、わかってますとも」
 「ドラッグと自分自身の欲求不満のせいで口走っていただけなんだ、それをわかってほしい、と彼は言っています。死んで初めて、あなたの立場になって物を見ることができた。あなたは何年も息子さんを助けようと努力し、決してあきらめなかったそうですね。彼が何か悪いことをしてもお母さんは大声ひとつあげなかった、とアンディが言ってますよ」
 女性は居心地が悪そうに身動きすると、やっと口を開きました。「どういうことかよくわかりませんわ。でも、そうです、わたくしは息子を愛してました。あの子には確かに問題がありました。でも、母親にできることがほかにあるでしょうか? どんなことがあろうと息子を愛し、援助してやるしかなかったんです」
 「たとえ、どんなにつらいときでも。息子さんの言葉から察するに、彼はあなたにひどい仕打ちをした。でも、あなたはそれを耐え忍んだんですね」
 「わたくしは理解していましたから。少なくとも、理解しようと最善を尽くしました。アンディが無事に生きていけるようにできるかざりのことをしたんです。あの子に幸せになってもらいたかった。でも、あの子はいつもひとりぼっちでした。わたくしはアンディを愛してましたし、この愛情はこれからも永遠に変わりませんわ。主人とふたりで精いっぱい努力しました。ただ、主人は辛抱できなくなったようでしたけどね。でも、どういうわけか、わたくしにはアンディが理解できたんです。まるで、あの子の魂をじっと見通せるような、そんなときがたまにありましたわ。あの子はとてもつらい思いをしていた。どんなに苦しんでいるか、わたくしにはそれが痛いほど伝わってきたんです」
 「あなたをさんざん悩ませて申しわけなかったと、彼は後悔していますよ」
 「そんな必要はありません。わたくしはあの子を愛してるんですから」
 やがて、リーディングの流れが変わり、アンディが自分の死について語りはじめたところで感情を大きく揺さぶるような緊迫感に包まれました。
 「息子さんは屋敷の裏手でひどく取り乱しています。何もかも一気にけりをつけてしまいたいと思っている。もうこれ以上はとてもやっていけない。彼は周囲にある自分の絵をしきりに見ています。自分が死んだらこの絵はみんなどうなるんだろう? しかし、そんなことはもうどうでもいいと思えてきた。気分が落ちこんで憂鬱でたまらない。自分自身に対して憎悪がわいてくる。情緒が不安定だ。息子さんが亡くなったとき、あなたはお留守だったんですか?」
 「ええ、そうなんです。ちょうどその日の午後、旅行から戻ってきました。主人が息子を発見したんです」
 「息子さんが屋敷の裏の野原を示しています。野原か、広い裏庭のようですね」
 「そうですわ。本当に嘘みたいですね。もうなんと申しあげていいかわかりませんけれど、でも、確かにおっしゃるとおりです」
 わたしはリーディングを中断して彼女にだいじょうぶかと尋ねました。このまま続けてかまわないか確認したのです。彼女はいいから続けてほしいと答えました。
 「息子さんが大きな木を示しています。オークのようです。とても大きくて葉が生い茂っている。彼がその木にのぼっています」
 急にわたしの喉が締めつけられるように苦しくなってきました。まともに息ができません。即座に死因がわかりました。アンドルーが自分の経験をそのまま伝えてきたからです。ここでわたしはいったんリーディングをやめ、わたしが体感しなくてすむように死の模様を映像的に示してほしいとアンドルーに頼みました。そして、アンドルーの霊が自分の死の状況をコントロールできないようなので、この交信を監視していてほしいとわたしのガイドたちにも依頼したのです。数分後、わたしはリーディングを再開しました。アンドルーが死の場面を映像として伝えてきました。
 「あなたの息子さんは裏庭のオークの木で首を吊りました。枝にはしごをかけてのぼった。そうなんですね?」
 アンドルーの母親が涙を流しはじめました。バッグからティッシュを取りだして目をぬぐいながら、そのとおり間違いはないと認めました。
 わたしは先を続けました。「とてもいやな気分です。こんなことは実に珍しい。こんなふうに感じたり見たりすることはめったにありませんから。あなたの息子さんは頭から体の外へ出ていったんです」
 アンディは肉体の上に浮かんでいる自分の姿を示しました。
 「彼はまだぴんぴんしている気分なので自分の死が信じられない。とんでもない失敗をやらかしたと思って、必死に頭から肉体のなかへ戻ろうとしている。でも、うまくいかない。彼はひどくあせっている。大声で泣きだした!」
 わたしはこの体験に庄倒されていました。この驚くべき映像を見ているそのままに母親に伝えました。しばらくしてわたしはふたたび先を続けました。
 「アンディはどうしていいかわからなくて、その場で待っていたそうです。父親が彼の遺体を発見して動転しているところも彼は見ていました。自分の行為が間違っていたことにアンディはすぐに気づいたそうです。あなたやお父さんに申しわけないと思った。あなたがご主人から話を開いて泣きくずれるところも彼は見ていました。あなたは、いつかこんな日が来るのではないかとかねがね思っていた。その思いを彼は聞き取り、あなたの心にあふれる愛も感じ取った。あなたをつらい目にあわせて、彼は心から悔やんだのです」
 「わたしにはちゃんとわかっているのだから、とあの子に伝えてやってください」
 「ありがとう、ママ、と彼が言っています。ぼくを許してほしい。ママを心から愛している。それに、もちろん、パパのことも。こっちではいろいろ助けてもらってるんだよ、ママ。ぼくが本来の自分を取り戻せるように面倒を見てくれるいい人たちがいるんだ。ぼくにとっては人生がつらすぎたんだよ、ママ」
 霊には自由意思があり、適当ではない時機に転生してしまう可能性があることを、わたしはアンドルーの母親に説明しました。「こういう現象が起きると、たいていは、“合わない”という強烈な違和感を持ったまま人生を過ごしてしまうんです」魂が現世を体験するには時期的にふさわしくなかったために、アンドルーは人生に適応できなかったのだとわたしは話しました。彼の魂は人生に直面できるほど成熟してはいなかったのです。「どうにも対応できないくらい庄倒されることがよくあるんですよ。そのために魂は逃げ道を求めてしまう。だから人は自殺をするんです」

 その女性はわたしの説明を完全に理解してくれました。確かにアンディは適応できていなかったと彼女は打ち明けました。「まだ小さな子供のころからあの子は弟やほかの同じ年頃の子供たちとひどく違っていたんです」 このリーディングによって、地上に早く戻りすぎた場合の概念が確認されたといってもいいでしょう。
 母親は息子と交信できて非常に喜んでいました。彼女は、いつか奇跡が起きるようにと祈っていたけれどついにその日が来た、と言ってくれたのです。これからもずっとあなたのことを思って生きていくから、わたくしを通してほんの少しでも現世を体験してちょうだいね、と彼女はアンディに語りかけました。
 わたしはこの女性に別れを告げましたが、その日は、思慮深い老成した魂との出会いに満足感を覚えていました。あらゆる人びと、あらゆる体験に愛を見出すという意味が彼女にはわかっていたのです。

  ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.167-176






 b-47 (自殺した父と母からのメッセージを霊界から受け取る)

 次のリーディングでも、霊の人生観の背後にある動機、そして、本人が現世で存命中に特異なふるまいをしていた理由、それらを深く洞察することができました。この情報は会席者にとってふたつの理由から貴重でした。自殺に対する心のわだかまりを解いただけでなく、彼女と両親の関係についての疑問に答えが出たのです。それは彼女が理解しようと長らく苦闘してきた親子関係でした。このリーディングによって癒やしが実現し、彼女の人生はこれまでとはまったく違ったものになったのです。ドアを開けて迎え入れたのは、ナンシーという名前の非常に魅力的な女性でした。

 「ナンシー、わたしを助けてくれているエジプト人のガイドがこう言っています。あなたの両親が来ているそうです。あなたが話したいと願っていたまさにその人たちがここにいるんですよ」
 ナンシーは大きな青い目を見開いてわたしを見つめました。唖然としたように口が開いて、言葉も出ない様子です。
 「あなたの後ろにご婦人が立っています。緑色がかったドレスを着ていて、とてもきれいな人ですね。髪は明るい茶色だな。彼女の微笑はこぢんまりして控えめだが、でも、愛らしい。そんな感じです。目は美しいブルーだ。もうわたしはだいじょうぶだ、と彼女が言っています」
 ナンシーはあいかわらずわたしを見つめるばかりでした。
 「この女性は母親のような気がします。ジョーンという名前に心当たりはありませんか?」
 「はい、わたしの母の名前です。もう亡くなりました。今おっしゃった女性の外見はうちの母にぴったりですわ」
 「今の彼女はあなたの記憶にあるよりもずっと若いようですね。ああ、あなたがお母さんの結婚式の写真を持っているそうですよ。霊界ではそっちの姿だそうです」
 「ええ、その写真なら昨日の夜、見たばかりです」
 ナンシーはあふれる涙を拭きました。信じられない、本当に嘘みたいだ、と彼女は繰り返しました。わたしは先を続けました。
 「お母さんがあなたに伝えてくれと言ってます。マーガレットとキャサリンに会ったそうです」
 「マーガレットは母の母で、キャサリンは母の姉です」
 「彼女はジョンという名前も口にしていますね。その名前をご存じですか?」
 「まあ、驚いた、ジョンはわたしの夫です。主人の名前なんですよ。母は彼を見てるのかしら?」
 「ええ、見てますとも。主人によろしく伝えてほしいと言ってます。あなたをくれぐれも大事にしてくれ、って」
 ナンシーは呆然としていました。信じられない面持ちで彼女は首を振りました。
 「ナンシー、どうやらあなたのお母さんは、亡くなる前にずいぶん具合が悪かったようですね。たくさんの薬があったようだ。これは意味が通じますか?」
 「はい、そのとおりです」
 「あなたのお父さんがお母さんを見つけたというのはおわかりでしょうか?寝室の床だったらしいのですが」
 「はい。父が発見しました」
 「あなたのお母さんはひどく後悔しています。あなたの許しを求めています。あなたをあんなに狼狽させるつもりなんてなかった、と言っている。わたしには、お母さんが精神的に不安定だったと感じられてなりません。お母さんはよく鬱状態になったんですか?」
 「ええ。そうです。どういうことだったのかわたしにはわかりませんが、母はいつも具合が悪かったんです。わたしが子供のころからずっとそうでした」
 「あなたに対していい母親ではなかったとお母さんが謝っています。お母さんは精神病院を出たり入ったりしていたんですか?」
 「はい、ほとんどそういう生活でした。躁鬱病を思っていたんです」
 わたしはすばやく答えました。「ああ、やっぱり。彼女はアンバランスなんですね。自分で人生を動かすのではなく、人生の流れに左右されてしまう人だった。お母さんはあなたに向かって懸命にこう伝えようとしています。あなたを心から愛している、生きているあいだにそれを言えなかったことが悔やまれてならない、と。あなたのお母さんには愛が理解できず、それをどう伝えていいのかもわかっていなかったんだと思いますね」
 「たぶん、そうだと思います。ほんとにすごいわ」
 「ナンシー、お母さんの精神状態が死の原因だったようですね。自殺だったんですか?」
 ナンシーが泣きだしました。
 「はい。わたしは母を少しでも助けたかったんです。でも、母はわたしをそばに近づけようとしなかった。鬱状態があまりにもひどかったんだと思います。わたしなりに努力したけど、でも、母をどう扱っていいのかわからなかった。母の自殺を防ぐ手だてが何かあったんでしょうか?」
 「いいえ、あなたのお母さん自身が彼女にとつての最大の敵だったんですよ。あなたには止めようがなかった。何を言ってもお母さんは耳を貸さなかったでしょう。そもそもおとなしく人の話を聞くような女性ではなかった」
 ナンシーは微笑を浮かべながらうなずきました。
 「お母さんはあなたの母親になれなくて申しわけなかったと言っています。あなたを傷つけるつもりはなかった。彼女は動物が大好きだそうですよ」
 「まあ、ええ、そうなんです。母は動物が好きでしたわ」
 「スキッピー、いや、スキッパーかな、一緒にいるそうですよ。これはなんですか?」
 ナンシーの目がますます大きくふくらみ、口があんぐりと開きました。
 「わたしが子供のころにうちで飼っていた犬です。母がかわいがってました。ほんと、とっても仲がよかったわ。スキッパーは毎晩、母のすぐ隣りで寝てました。あの、訊いてもいいでしょうか? 母は幸せなんですか? つまり、今はだいじょうぶでも、これからどうなるんです? 母はどこへ行くんでしょう?」
 わたしはこの質問を母親ジョーンに心で伝え、数分ばかり待ちました。このように質問した場合、霊がその意味を把握してわたしに返答を返すまで一定の時間を要するときもあるのです。
 数分後わたしは言いました。「お母さんは別の婦人から援助を受けているそうですよ。一種のカウンセラーですね。お母さんは自分で命を絶ってしまったが、その自覚があったわけではない。精神的に混乱していた。あちらへ移ってからは、精神状態を改善しょうと努め、心に愛を取り戻す方法を学んできたそうです。自身の愛を確認できるようにね。今は素敵なところにいます。この地上によく似ているが、もっと美しいところですよ。彼女は、たとえ死んでも永眠しているわけではない、と言っています。それどころじゃない。失った時間を埋め合わせるたみに彼女なりに努力しているんですね」
 そこからこのセッションはまったく新たな様相を呈してきました。わたしは母親からのメッセージをさらにナンシーに伝えました。
 「お母さんは元気だそうですよ。家族と一緒だが、まだ自分ひとりでやらなければならないことがある。それは誰かに代わってもらえることではない、自分でやるしかないんだ。お母さんはあなたのお父さんに対してひどく申しわけないと感じていた。責任を深く感じていた、と話しています。これはどういう意味なのかよくわかりませんね」
 「わたしにはわかります」ここでナンシーがまたもや泣きだしました。
 「では、先を続けましょう。あなたのお父さんか、なるほど。お父さんは優しいタイプですか? というのは、お母さんがお父さんの話をすると、すぐに男性のバイブレーションが伝わってくるんです。彼はわたしの横に立っています。お父さんも亡くなってるんですか?」
 「はい。母が死んでしばらくしてから。父は元気なんでしょうか? どうか教えてください。わたしの声は父に聞こえてるんですか?」
 「ええ、お父さんは元気ですよ。お母さんと一緒にいます。お母さんのそばにいることだけが自分の望みだったと言っています。今も一緒にいる、と。来てみるとこっちはまるで違っていた、とお父さんが話しています。天国とは天使や竪琴であふれた場所だと想像していたけれど、そんなものはまだ一度も見ていない。彼は田舎にいるそうです。自分がひどく愚かだったという話をしていますね」
 「ええ、聞かせてください」
 「いや、これは妙だな。お父さんは馬がお好きだったんですか?」
 「ええ、まあ、農場で育ってますから。農場に馬はいたでしょうけど、はっきりとは知りません。わたしには……」
 そこでわたしがさえぎりました。彼女の父親が別の話をしだしたからです。
 「いえ、お父さんは競走馬のことを話してます。競走馬が好きだったんですね。競馬でギャンブルをやっていたんだ」
 「ああ、そうですわ。毎週土曜日になると父は競馬場にでかけていました。でも、信じられない。父は今でも競馬をやってるんですか?」
 「そのつもりになればできる、と言ってます。似たようなものが向こうにもあるけど、お金は賭けない。そもそもスポーツマンシップのためにやるものだから。ナンシー、お父さんはあなたを見棄ててしまったと言っています。本当にすまなかった。でも、孤独でたまらなかったんだ。わたしはおまえを見棄ててしまった」
 「いいのよ、パパ。さぞかしつらかったんでしょうね」とナンシーが言いました。
 「ナンシー、これはいったいどういう意味でしょう? お父さんがわたしに銃を見せています。四五口径のようだが、申しわけない、わたしは銃に関しては門外漢でね。これは拳銃だが、小型ではない。わたしに見せていますよ。それから、部屋も。書斎か何かのようだな。テラスがあって、まわりには書棚が並んでいる。カモのデコイも見えます」
 「父はデコイを集めてました」
 「お父さんが血だまりを示しています。椅子の背にのけぞるようにもたれている。なんと、お父さんは拳銃で自殺なさったんですか?」
 ナンシーが不意に声をあげて泣きだし、「はい」と小さく唇だけ動かして認めました。
 わたしはショックで呆然となりました。家族のひとりが自殺するだけでも耐えがたいことなのに、両親がふたりそろって自殺してしまうなんて想像を絶しています。悲痛な思いがわたしの心にあふれ、ナンシーに対する同情と共感がこみあげてきました。わたしは数分ほど中断して気持ちを落ちつけねばなりませんでした。本当に耳を疑う出来事でした。
 「すみませんね、ナンシー。なまなましい描写をするつもりはないんですが、受け取ったままをあなたに伝える必要がある。あなたのお父さんは自分で左のこめかみを撃ち抜いた。あなたはそれをご存じのようですね。そうなんですか?」
 「はい、父を発見したのはわたしですから。一日じゅう連絡を取ろうとしてたのに父が電話に出なかったので、仕事の帰りに家に寄ってみたんです。書斎に入ってみると、父が椅子の背にもたれこんでました。腕がだらりと垂れて、その下の床に拳銃が転がってました」
 「それは、なんと申しあげていいのか。本当にお気の毒な話だ。自分が間違っていたとお父さんが言ってますよ。お母さんを失って生きていく張りがなくなってしまった。あなたやジョンの重荷にもなりたくなかった。あなたたちにはあなたたちの生活があったのだから。これは不思議だ。前にもこういう話を聞いたことがある。お父さんはこう言っていますよ。どっちみち自分の人生は終わりかけていたのだから、そちらに長居する必要はなかったんだ、と」
 「どういう意味ですか?」
 自殺した場合、その人に定められた本来の死の時間が来るまでは地上との絆が切れないものだ、とわたしはナンシーに説明しました。つまり、彼女の父親の寿命はまもなく尽きるところだったのでしょう。従って、自殺しても、物質界に残された時間はその分だけ短かった。父親が妻に出迎えてもらったこともナンシーに伝えました。
 すると、ナンシーが尋ねました。「でも、どうやって母にそんなことが?」
 「あなたのお母さんは霊の世界ではほんの少しばかり高いレベルにいたんですよ。高いレベルから低いレベルに戻って、ほかの霊を援助することはできるんです。しかし、低いレベルの霊は、自分でその資格を獲得しないかざり、高いレベルには行けません」
 ナンシーはこの概念にいささか戸惑ったようでしたが、これが彼女にとって形而上学的世界への第一歩となりました。形而上学をもっと勉強すればこの概念が理解できるようになるでしょう、とわたしは彼女を励ましました。
 「ナンシー、お父さんはふたたび幸せになったとあなたに伝えてほしいそうです。今はお母さんと一緒なんだから、と」
 「それを聞いてわたしも幸せです。ほんとに父のことが心配だったので。無事だとわかってこんなうれしいことはありません。ふたりが今は一緒なんですからね。そうなんでしょ?」
 「ええ、一緒ですとも。おや、お父さんが湖の話をしてますね。いや、湖畔にある家のことかな。桟橋でお父さんが釣りをして、それをお母さんがながめている、と。これはどういうことだろう?」
 「ああ、それならわかります。わたしが小さいころ、湖のそばにサマーハウスがあったんです。父はわたしたちを桟橋まで連れだして釣りをしたものですわ。わたしも釣りかたを教わりました」
 「なるほど、お父さんは天国にいることをあなたにわかってもらいたいそうですよ」
 「釣りをしてるくらいですもの、確かにパパは天国にいるんだわ」

 こうしてわたしたちは交霊会を終え、霊やガイドたちに感謝を捧げました。そして、今日の情報がナンシーの癒やしに役立つようにと特別な祈りも付け加えたのです。その祈りが通じたことはすぐにわかりました。帰りぎわ、ナンシーがわたしのほうを振り向き、まだ目に涙をためながらこう言ってくれたのです。「本当になんて言ったらいいのか。まさに奇跡です。おかげで、気持ちがすっかり楽になりました。安らぎに包まれた感じ。十年以上も捜しつづけて、それでも見つけられなかった安らぎです。助けてくださってありがとうございました。すばらしい体験でした。本当にありがとう!」

   ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.176-186






 b-48 (五十回目の結婚記念日を霊界の妻と祝う)

 大変感動的な再会が数年前にありました。深い愛情で結ばれたひと組の男女の太い絆をそこに見ることができたのです。わたしはラリー・グレイという男性から電話をもらいました。年齢は七十代後半で、まるで演劇でもやるような深みのある声、そして、穏やかな話しかたでした。友達からわたしのことを聞いて、“ある特別な行事”を助けてもらえるかもしれないと思ったそうです。「それはなんですか?」とわたしは尋ねました。もうすぐ五十回めの結婚記念日なので、「ぜひ家内とその記念日を祝いたい」という返事でした。唯一の障害は、その妻がすでに亡くなっていることでした。お力になれるでしょうとわたしは答え、日取りと時間を決めました。

 わたしは腰をおろすと、自分の仕事について説明しました。冒頭の祈りを唱え、それが終わってラリーの右隣りに目を向けると、そこに、四〇年代ふうのドレスを着た美しいブルネットの女性が見えました。「薄いピンク色のドレスを着たケイがあなたの横に立っていますよ。まるで女優さんのような印象だ」
 「実際、家内は女優でしたからね。わたしたちはバークレーの芝居で出会ったんです」
 「彼女があなたをラヴ″と呼んでいます。あなたの名前の代わりにラヴと言ってますよ」
 「すばらしい。わたしたちはいろんな呼び名で呼び合ってました。いやはや、わたしはこんなおじいちゃんになってしまって。すっかり白髪頭だ」
 「わたしはあなたの心と結婚したのであって、髪の毛と結婚したのではない、と彼女が言ってます」わたしとラリーは笑い声をあげ、そして、先を続けました。
 「ケイがこう言ってます。あなたは美しい声の持ち主だ、と。いつも歌を歌っている、と」
 「ええ、そのとおりです。週末にはいつもクリスチャンサイエンス教会に行って聖歌隊で歌ってるんですよ。やることがあるっていうのはいいですからね。みんな、とても親切にしてくれます」
 「今度はあなたがたの結婚式の話をケイがしていますよ。おふたりが結婚式をあげたのはカリフォルニアではなかったんですか? たとえば、ニューヨークとか?」
 「ええ、ニューヨーク・シティでした。家内は結婚した年を覚えてますか?」
 「一九四〇年だとおっしゃってますね」
 「そう、そのとおりです。教会はどうでしょう? 教会の名前がわかるでしょうか?」
 「ちょっと待ってください」わたしは数分ばかり待ちました。結局、わかったのは俳優の教会ということだけでした。
 ラリーが答えました。「そう、あの教会はちょうど通りの角にあって、周辺の劇場から俳優たちが通ったものです。わたしたちがどこに住んでいたか、家内は話してくれるでしょうか?」
 わたしはこの質問をラリーの妻に伝え、しばらくして口を開きました。「アップタウンについて話してますね。アッパー・ウエストサイドにある小さなアパートのようです」
 「おお、すごい、すごい。そのとおりです。ワシントン・ハイツというところでした。いやあ、これは興奮してきますな」
 「ラリー、彼女が何かフィラデルフィアについて話してます。フィラデルフィアについて思い当たることがありますか〜」
 「はい」
 「汽車でフィラデルフィアまで行ったそうですよ。フィラデルフィアに親戚でもいらしたのかな? どうです、わかりますか?」
 「結婚したあと、わたしがフィラデルフィアの教会をやめてニューヨークの教会に移るまで、日曜ごとに向こうへ行かなきやならなかったんですよ」
 わたしは笑いながら手をたたいた。「なるほど、すごい、すごい。わかりました。では、先を続けましょう。ケイは亡くなったときにひとりだったと言ってます。自分がそれを望んだ、と。どうかそのことで悲しまないでほしい」
 「ああ、あんなつらかったことはないよ、ケイ。本当に、もう少し待ってくれたってよかったろうに」
 「いいえ、彼女はあのときに行かねばならなかったんですよ。奥さんはとっても素敵な方ですね。きれいな帽子をかぶっている。デザインから見て四〇年代のものらしい。帽子をかぶるのが大好きだったと彼女が話しています。よくあなたに言ったそうですね、これから帽子を買いにダウンタウンへ行ってくるわ、と」
 「ええ、そうなんですよ。いやはや、あれからずいぶんたったものだ。でも、ケイは帽子が大好きでした。まったく、あの帽子のコレクションはみごとだった。家内はとってもおしゃれでしてね。華やかな色彩が好きで、美しいものが好きだったな」
 「今でも好きですよ。ピアノについて話をしていますね」
 ラリーは笑いだし、ぜひピアノの話を聞かせてくれとケイに訴えました。
 「あなたの家にピアノがあるそうです。彼女はそれを弾くのが大好きだった。いつもピアノを弾いていた。ワグナーのことも何か言ってます。これはどういうことかわかりますか?」
 「ええ、もちろん。驚いたな! ケイのためにピアノを買って、それが今でもうちにあるんです。でも、ピアノを弾いたのはわたしで、家内は全然弾かなかった。ピアノの演奏はいつもわたし。家内はわたしと一緒に歌ったんです。編曲も立派なもんだったな。覚えてるかい、ケイ? ああ、わたしは今でもピアノを弾いてるよ。わたしの演奏を家内は見てくれているんでしょうか?」
 「ええ、確かに見ていますよ。左側の同じ場所に立ってます。昔のようにね。さっきのワグナーの話はなんなんですか?」わたしはラリーに尋ねました。
 「それは、あのう、ちょっとお恥ずかしいんですが、わたしは古いレコードを集めてるんですよ。かなりのコレクションでしてね。特にクラシックが大好きで、このところ、ワグナーをかけてたんです。変わってるかもしれないが、一日じゅうかけっぱなしでね。落ちつくんです。べつにかまわんでしょう。人を傷つけるわけじゃないんだから」
 「ええ。プレーヤーの針が傷むだけですね」わたしたちはなごやかな笑い声を立てました。わたしはメッセージの残りを伝えました。
 「ラリー、ケイがこう言ってますよ、さっき墓地であなたと一緒だった、と」
 「ああ、今日はわたしたちの結婚記念日なんです。今も愛してることを教えてやりたかった。あそこでケイのことを考えてました。じゃあ、知ってたんだね、ケイ?」
 「ええ、奥さんはあなたが来てくれたことをとても喜んでます。墓地に持ってきてくれたバラの花が気に入ったそうですよ」
 「いやあ、たいしたもんじゃない。気に入ってくれればと思っただけでね」
 「確かに気に入ってくれてますよ。彼女が地下の納骨堂を見せていますね。奥さんは納骨堂にいらっしゃるんですか?」
 「ええ、そうです。いずれわたしも家内の隣りに行きます」
 「奥さんが花を持ったあなたを示しています。変だな、彼女は手に棒のようなものを持っている。どういう意味かわからないな。あなたならわかりますか?」
 「ええ、たぶん。墓地へ行ったとき、家内の納骨棚の前に花を飾るために棒状の柱をつかまなきやなりませんでしたから。家内の納骨棚は上段のほうなんですよ。彼女はそのことを言ってるんじゃありませんか?」
 「はい、そうです。ずっと上だといった話をしてますね」やがて、ケイが早口でメッセージを伝えてきました。わたしは上を見て、「なるほど……わかりました……ありがとう」と答えました。それからラリーに顔を向けました。「奥さんの納骨棚は奥のほうですか? なんだか、曲がりくねってますね。たどりつくまでが大変そうだ。奥に進んで、大理石の階段をおりて、それから横へ。彼女がそう伝えてきています」
 これはラリーにもよくわかりませんでした。わたしはケイのメッセージを解読しょうとするうちにすっかり迷路に迷い込み、ラリーまでそこへ誘い込んでしまったようです。わたしは先を続けました。
 「ケイの隣りにご婦人が立っています。非常に特徴のある声だ。とても演劇的です。オペラも歌ったようですね。彼女もやはりピアノの話をしてますよ。どうしてかおわかりですか?」
 「ええ、もちろん。それはエスターです。すばらしい歌手でした。わたしたち三人はよく一緒に舞台の仕事をしました。何年もわたしのピアノの先生でしたしね。ああ、それにしても、彼女の話が聞けるなんて実にうれしい」
 「向こうには大きな演劇界があるのだとこのご婦人が話してますよ。ボイストレーナーや音楽の教師が大勢いるそうです。でも、違いがある、と彼女が言ってます。現世のような音楽ではない。もつと純粋だ。こちらでは完全なハーモニーがある。現世でもハーモニーの話はするが、真実には遠くおよばない」
 「すばらしい」
 リーディングはさらにしばらく続き、ラリーの妻と教師が地上で分かち合った過ぎ去りし日の思い出を語りました。それはなんともすばらしい五十回めの結婚記念日でした。もう何も言うことなんてないのではなかろうか、とわたしは思いました。すると、ケイが言ったのです。
 「ラリー、パリについて何か知ってますか? つまり、あなたはケイとパリで過ごしたことがあるんですか?」
 「ええ、確かに。家内はなんて言ってるんです?」
 「パリのエッフェル塔にのぼったと話してますね。あのときは本当に幸せだった。これはどういう意味でしょう?」
 ラリーが涙を流しました。彼はティッシュを出して目頭をぬぐうと、わたしをまっすぐ見つめました。「わたしもあのときは本当に幸せでしたよ。ハネムーンの初日にエッフェル塔にのぼったんです」
 「あなたと一緒に暮らした人生そのものがハネムーンだった、とケイが言っています」
 ラリーが微笑を浮かべ、わたしはメッセージを続けました。
 「奥さんはこれからもずっとあなたと一緒ですよ。それに……待ってください、彼女がこう言ってます、家に帰って、わたしのためにピアノでラヴソングを弾いてほしい、と」
 それを聞いたラリーは笑顔で言いました。「そう、まさにこれはケイだ。彼女はしゃべりだしたら止まらないんです」
 「これからも奥さんはそのままですよ」とわたしは答えました。

   ジェームズ・プラグ『もういちど会えたら』(中井京子訳)光文社、1998、pp.199-207